薬剤師がAmazonの処方薬のネット販売を脅威に感じる理由「企業規模」「服薬指導が不十分」を抑えて1位になったのは？【2024年版】

新型コロナウイルス流行以降、オンライン診療やオンライン調剤への注目が高まっています。

そんな中、大手ECサイトで有名なAmazonが処方薬販売を検討しています。

米アマゾン・ドット・コムが日本で処方薬販売への参入を検討していることが分かった。中小薬局と組み、患者がオンラインで服薬指導を受ける新たなプラットフォームをつくる方向だ。利用者は薬局に立ち寄らずに薬の配送までネットで完結できる。
引用元:日本経済新聞

すでに、巨大な配送ネットワークが確立しているAmazonが処方薬販売に参入することで、患者さんは薬局に出向かずに迅速に薬を入手できると考えられます。

その一方では従来式の薬局の需要減少や、薬剤師と患者さんの関係が希薄になる懸念も。

今回は、現役の薬剤師100名に対し、Amazonなどプラットフォームが処方薬販売に参入することや、オンライン調剤への考えを調査しました。

医療もオンライン化が避けられない今後、便利かつ安全な医療を届けるための参考にしてくださいね。

対象者：薬剤師100人
調査方法：クラウドワークスによるインターネット調査
調査期間：2022年9月13日～9月19日

Amazonの処方薬のネット販売。薬剤師にとって脅威？

まずは、いち薬剤師としてAmazonの処方薬販売(電子処方箋に基づく)に対して感じることを伺いました。

4割の薬剤師が、Amazonの処方薬販売参入を脅威と感じる結果です。

それぞれの回答理由は以下です。※回答は読みやすいように一部改変しています。

Amazonの処方薬ネット販売を脅威に感じる理由

1位：従来の薬局・薬剤師の需要が減るから 55％

若い人達はネットに慣れているので、年配の方は今後も実店舗に来局してくれるだろうが、若者の新規患者の獲得が難しくなってくる。

どんどんネット販売の市場が拡大し、実店舗を構える薬局の需要が減ってしまうことで、薬剤師の需要も減ってしまうかもしれないと感じるため。

個人店舗の薬局は淘汰され、対面での薬局業務は必要となくなると思うとゾッとします。薬剤師の選ばれる時代になったのかと思います。

選ばれた薬局はよいが、選ばれなかった薬局は死活問題になる。自分が患者の立場なら絶対にオンラインで完結する方を選ぶ。

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2位：Amazonの企業力に敵わないから 25％

Amazonの処方薬販売参入に脅威を感じる25％の薬剤師が、Amazonの企業力を理由として挙げました。

amazonは既に全国各地への配送網を持っており、そのスピード感やノウハウをほかの調剤薬局で提供することはかなり難しいと思います。処方薬のネット販売を利用しようと思った場合、第一選択となりうるのではないでしょうか。

アマゾンの情報ネットワークにはどこの薬局でも太刀打ちできない。サービス面でも従来の薬局では人員不足もあり、対抗が難しい。

ネット販売の実績とブランド力があり、自宅まで配達してもらえる利便性から若者を中心に支持されそう。自宅までの配達はADL低下した高齢者にもマッチするし、高齢者患者のキーパーソンとなる事が多い子供世代はアマゾンに慣れ親しんでいると思われる為、高齢者にも子供世代の手続き代行を経て普及しそう。

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3位：服薬指導が不十分になるから 10％

薬局薬剤師として、現場で患者さんに直接関わる機会が減ることが予想されるため。それにより信頼関係や身近な相談相手としての役割が果たせなくなるから。

その他 10％

電子処方箋についてはコロナウイルスが流行している面で有用であると思いますが、配送料については薬局負担となると費用がかさむことが見込まれるため。

Amazonが処方薬の販売に参入すると、従来式の薬局に処方箋を持ち込む患者さんが減少すると予想されます。

それにより薬局・薬剤師の需要は落ち込み、倒産や雇用が減少するかもしれません。

今後生き残る薬局の条件のアンケートでも「オンライン対応」がトップとなりましたが、Amazonの企業力には敵わない可能性が高いです。

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Amazonの処方薬ネット販売を脅威に感じない理由

1位：従来の薬局と棲みわけ可能だから 31.7％

ネット販売を望む客と実店舗での販売を望む客とでは、そもそも客層が違うので、脅威にはなりえない。既存の薬局と住み分けできると思う。

高齢患者はAmazonには流れなさそうだから。ネット販売が可能になっても、自分の通う病院やクリニックの前に門前薬局があれば、たとえ待ち時間がかかったとしても、時間に余裕のある患者（特に高齢者）はAmazonではなく門前薬局を選ぶため、脅威には感じません。

薬の説明を対面で受けたい方はたくさんいらっしゃると思うので、予想されるよりもアマゾン薬局は浸透しないと考えているため。

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2位：患者さんの利便性が高いから 30.0％

amazonなどのプラットフォーマーが一括で在庫管理をすることで、欠品のリスクが軽減され、患者利便性の向上につながると思われるため。

処方箋薬もネット販売してもらった方が診療を受ける側からするととても助かる。今の時代、ネットで解決できることはネットで決めたいと消費者としてはそう思う。

症状に応じて、すぐに必要な物が手に入ることは、使う方にとって大変大きなメリットになるから。コロナ禍で外出できない人にも利益が大きい。

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3位：時代背景を考えて自然な流れだから 28.3％

コロナ鍋の影響もあり、医療関係の仕事にも大きな影響を及ぼしている中、オンラインで処方箋を受理し調剤販売するのはこの時代のニーズに適っていると思います。

脅威に感じないと言えば嘘になるが、時代の流れとして当然の事と思う。新型コロナを境に一気にIT化が進んだのもこの事象の裏付けとなっていると思う。

これからの時代に合っていると思う。薬剤師側としては対物から対面へと変化させていくことを目標としているが、利用者側からしたらオンラインでできる方が気楽だと思う。薬剤師としても対面で起こるトラブルを防げるので自己防衛としていいと思う。

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その他 10.0％

アマゾンの薬局参入は日本の医療業界の起爆剤として必要だと思うため。薬局が個々に在庫を抱えて、病院の隣に隣接しないと経営できないのは、おかしな状態だと感じます。

薬の調剤、配達など薬剤師でなくても重大なミスに繋がらない事は担ってくれそうなので、服薬指導や疑義など薬剤師ならではの仕事に特化してできそうなので薬剤師のミスも減りそうだから。

Amazon受け取りを選択する高齢者は少なく、予想よりも浸透しないと感じる薬剤師もいました。

一方で、コロナ禍やネットビジネスが浸透した時代背景を考えると当然の流れであり、患者さんのメリットが大きいので脅威とは思わないという声も。

Amazonが浸透しないから脅威と思わないと感じる薬剤師よりも、ネット販売を好意的に捉えているため脅威と感じないと答えた薬剤師の方が多い結果です。

70代以上の方はネットを使わない人も多いですが、今の50～60代は普通にスマホやネット通販を使う人も多いですね。

Amazonを普通に使える世代が大半になったときは、ネットでの処方箋受け取りが主流となるかもしれません。

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Amazon以外のプラットフォーマー参入は脅威となる？

国内にも大手プラットフォーマーは存在します。ヤフーや楽天・LINEなどですね。

海外企業であるAmazonに限らず、様々なプラットフォーマーが処方薬販売に参入することについての意見は以下です。

中小の薬局が数多く参入していけば、その分脅威になってしまう。今後プラットフォーマー同士が競争化していけば、さらに必要性が増えそうだから。

プラットホームのあるところは結局一番強いと思う。それぞれの薬局が頑張っても広告等からの周知、患者の引き込みはレベルが違うと思う。

他社も積極的に参入することで、薬剤師としての仕事の内容をより見直しがされると良い。薬剤師でなくてもできる軽作業に費やす時間が軽減されることを願っている。

大手で実績がある企業であれば底まで感じない。ある程度信頼されているプラットフォーマーでないと、患者も使わないと思う。

本当ならAmazon一括ではなく、薬局自身が自由にプラットフォームを選びそこと提携するのが良いと思う。Amazonはデカすぎるので何をされるかわからない恐怖感がある。(例えば契約料金など)

あえて、Amazonや楽天などのプラットフォームでやらなくても、厚生労働省がしっかり管轄している医療関係者によるプラットフォームで日本全体を総括して作った方が、効率が良いのではないかと思う。
マイナンバーカードも普及してきているので、服薬状況など、全国どこでも医療従事者が情報共有し、把握できる状況になるのは不可能ではないと思う。

海外企業であるAmazonは、実験的に参入してすぐに撤退してしまう懸念もあります。

処方薬のネット販売をAmazonのみが引き受けるのではなく、様々なプラットフォーマーが参入する方が薬局側の利益に繋がるでしょう。プラットフォーマーと提携できない薬局の倒産も防げます。

Amazon参入を皮切りとして、信頼して使用できるプラットフォーマー参入が期待されます。

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オンライン服薬指導・処方薬ネット販売。薬剤師の興味は？

次に、Amazonの仲介に限らず、オンライン服薬指導や処方薬ネット販売（電子処方箋に基づく）に参入したいか伺いました。

多くの薬剤師が、オンライン対応に興味を持っていることがわかりました。

回答の理由は以下です。

オンライン服薬指導や処方薬ネット販売に参入したい理由

1位：今後オンライン対応がメイン・必須となるから 39.1％

薬局業界での生き残りをかけて今後避けては通れないサービスの一環になると考えられるし、設備投資ができない会社は淘汰していくと思うから。

田舎では必須、時代のニーズに合わせる必要がある。高齢者や交通弱者、透析患者などリアルタイムで投薬が難しくなる場面は多々ありニーズはかなりある。

参入してみたいとかではなく、参入しざるを得ない。オンライン希望の既存の患者を全て逃すわけにはいかないので。

オンライン服薬指導については既に当社では導入済みかつ活用中。直接来局する患者と時間が被った場合の待ち時間の増加など、人数の少ない店舗での課題は見られるものの、利用者にとっては良いシステムだと思うため。

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2位：リモートワークが可能になるから 28.7％

伸び代の大きな将来性のある領域なので、ぜひ関わっていきたい。オンラインの業務が増えることは、リモートワークの推進など薬剤師の働き方改革にもつながると思う。

オンライン服薬指導業務を副業でしたいです。平日は薬局勤務ですが、休日や夜など、また産休などで在宅している薬剤師がリモートワークで働けると良いと思います。

患者さんの顔が見える形でしっかり服薬指導できれば問題ないと思う。薬剤師側のテレワーク化にもつながったりしないかなと期待しています。

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3位：利便性が高いから　23.0％

病院での話ですが、オンラインでの服薬指導を行えるようになれば、感染しやすい状態である外来の化学療法を行なっている患者等に対面せず話せるのは利点だと思うからです。今は調剤薬局でのお話のみですが、診療がオンラインでできる以上、病院の薬剤師が行う服薬指導もオンラインでできると思います。

以前在宅医療にかかわっていた経験から、薬局にお薬を取りに行くことが難しい方が多いことを実感しています。そういう方々に対してはオンラインでの服薬指導・処方せんネット販売は有効な手段かと思います。

待ち時間に対するクレームが減ったり、対面での患者からの恫喝などのトラブルも減ると思う。同意さえ得られれば録画もできると思うので言った言わないのトラブルも起こりにくいと思う。

4位：スキルアップに繋がるから 6.9％

オンライン服薬指導では、直接対面することで感じられる患者さんの変化などを汲み取ることが難しいこともあり、薬剤師としてより高いスキルが必要になると思います。対面式の薬局に慣れたあとのステップアップとして、チャレンジしてみるのも1つかな、と思います。

その他 2.3％

在庫管理もしやすくなると思いますし、オンラインであれば、一対一の環境が整うのでしっかりと指導ができると思います。

コロナ禍で急速に進んだ、医療のオンライン化。

システムが整えば問題なく運用できることがわかったこともあり、今後はさらにオンライン化が進むため、オンライン対応は避けられないと感じる薬剤師が多い結果です。

オンライン化が進めば、主に医療現場で働く薬剤師にもリモートワークができる可能性が見えてきますね。コロナで自宅療養中や、子育て中の薬剤師も働きやすくなります。

患者さん・薬剤師双方に利便性が高いオンライン服薬指導は、薬剤師からも期待されていることがわかりました。

オンライン服薬指導や処方薬ネット販売に参入したくない理由

1位：対面でないと服薬指導は難しいから 30.8％

対面してこそ患者様の体調を直で感じることができ、そこから指導につながることもある。実際にやってみないとわからないこともあるとは思うが、これが現状思うことである。

2位：窓口業務と並行して行うのが難しいから 23.1％

単純に業務が増えて対応しきれない。対面の患者様と並行して行うのは難しい。薬局ごとに対応できる時間や枚数の上限を設定できたり、薬の在庫の有無で、受付可・不可など、薬局側の対応も柔軟にできるなら参入してみたい。

3位：クレームに繋がる可能性があるから　15.4％

直接でも話を聞いていないような人がいるのにオンラインで服薬指導をしても理解できているのか不安。それでクレームなどがきても責任が取れない。

その他 30.8％

普通の保険調剤薬局で勤務薬剤師として働いてきましたし、これからもそうしたいので、正直言って参入したいとは思いません。

対面に比べて、患者さんとの関係が希薄になる懸念があるオンライン服薬指導。

相談しやすい雰囲気作りや、対面服薬指導が必要な患者さんの見極めなど、課題は多いと考えられます。

また地域連携薬局導入などで仕事量が増えている薬剤師に、オンライン化でさらなる負荷がかからないようにする必要もありますね。

Amazonなどプラットフォーマーと、薬剤師がお互い助け合える環境作りが理想です。

薬剤師がAmazonの処方薬のネット販売を脅威に感じる理由のまとめ

医療のオンライン化は利便性が高いですが、服薬指導の質の低下など懸念すべき点も多くあります。

ですが、適切にオンラインを利用することで、在宅など対面での対応が必要な患者さんへのケアが充実する可能性もあるでしょう。

リモートワークが可能になるなど、薬剤師側の働き方改革にも繋がります。

今後は様々な形での服薬指導を想定し対応することが、薬局の生き残りに重要と言えそうです。

マイナンバーの紐付けなど、薬剤師と患者さんが共に安心して調剤できるシステムの確立に期待したいですね。

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