番組審議会記録

第71回GAORA番組審議会記録

第71回番組審議会は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、書面による開催としました。
今回は「プロ志望高校生合同練習会」について審議を行い、委員の皆様から次のようなご意見をいただきました。


番組審議

<番組概要>
新型コロナウイルスの影響で高校球児たちは対外試合を制限され、3年生はプロ野球へ向けて練習の成果を発揮する場を、スカウトは未来のプロ野球で輝く原石を発掘する場を失った。そんな中、NPB(プロ野球を統括する「日本野球機構」)と高野連(日本高等学校野球連盟)が合同で救いの手を差し伸べ、全国の球児に合同で練習をする機会を提供。
この番組は、そのうちプロ志望届を提出した西日本地区の高校生を対象に甲子園球場で行われた練習会(1日目:シートノック・フリーバッティング/2日目:シートバッティング)の模様を、細大もらさず中継したものである。

<委員長総括>
まず、「NPBと高野連が連携して実現した歴史的イベント」をライブ中継の番組として企画・放送したことは、スポーツ専門チャンネルであるからこそ可能になったものであり、高校野球ファンのみならず、プロ野球の新人発掘、ドラフトに興味関心をもつ比較的コアな層にも訴求し得る積極的な行いであったと高く評価できる。
スポーツのシーンでフィールド上の選手たちはそのプレーに集中しているのであって、彼らにはドラマや演劇などとは違い、基本的に観る者に対して何かを演出する意図はない。したがって、それを魅せるのは制作者であると私は考えている。その点でカット数の多さ、多彩なアングルとフレーム、被写体の選択、スローモーションの採用などの創意工夫は、球場でのリアルに中継ならではの魅力を加える極めて重要な要素であろう。
「練習できる喜び」と「トライアウトの冷徹さ」という二面性の表現には、制作者はかなり困難な課題に取り組んだように思われる。「トライアウトの冷徹さ」を描く点では、不十分を指摘される委員の意見もあったが、自らの望む将来を掴もうと必死で頑張る高校生たちを見守る「大人」たちの温かい心がこの番組全体を流れ、それが視る者にまた高校生たちを温かく応援する気持ちを生じせしめ、それがこの番組の魅力の重要な一つを構成しているのではないだろうか。
今回の審議対象番組は、スポーツ専門チャンネルの持ち味を十分に発揮した労作であり、優れた番組であったと考えることができるが、さらに多くを学び、挑戦し、より良くスポーツの魅力を人々に伝え、人々の気持ちを明るく元気にできるような番組が今後もGAORAから多く生み出されることを強く希望する。

<審議意見>委員の主な意見は次の通り。

  • ・球児の思いを出来るだけ表現しようとしていたのが良く分かった。生中継、しかも短い準備期間を考えると十分な対応だったのではないだろうか。
    ただ、制作意図にある「練習会の二面性」(練習ができる喜びと、トライアウトの冷徹さ)は、あまり感じ取れなかった。練習だから当然なのだが「感動の甲子園」のプレーを期待した視聴者は物足りなさを感じたのではないだろうか。高校球児を思うあまり解説も柔らかで視聴者に何を伝えるのか、目的が定まっていないように感じた。練習できる喜びより、プロ野球を志す選手たちの必死さを優先する方が良かったのではないか。憧れた甲子園でのプレーは嬉しいだろうが、そこに感動を求めてはいけなかったのではないか。そう考えると番組ではやはり実績のあるプロスカウトの視点での解説が必要ではなかったかと思う。彼らが夢を実現するためには何が必要で不足しているのかを視聴者に分かりやすく解説してもよかったのではないか。その意味でも「高校野球の聖地・甲子園」とあまりダブらせようとせず、「練習できる喜び」も意識する必要は無かったのではないか。プロとアマの狭間で中途半端になったように感じた。
    今回は、制作側の「高校野球・甲子園」への思い入れ、球児に対する「優しさ」が勝ちすぎていたように思えた。もう少し客観的に、思い切ってあの高校野球と切り離して制作したら、どんな番組になっていただろうか。
  • ・面白かったところは出演者の選択である。智辯和歌山の前監督、高嶋氏のお話は特に興味深く、高校野球ファンだけではなく多くの指導者にとっても為になる小話があちらこちらに散らばっていた。甲子園球場のベンチがいかに暑いか、普段の練習は竹バットで試合前になると金属で打たせていること、ノックには技術があり甲子園でわざとイレギュラーさせることも出来ることなど、聞き飽きない内容であった。更に、狩野氏、藪氏の両元プロ選手からもプロならではの良い選手の見極め方などが織り込まれていて、解説があるからこそ映像で見ている選手の凄さを知ることが出来た。
    一方、もう少し欲しかった情報として、「スカウト目線」というものが足りなかったように感じた。スカウトはどういうところをみて選手を選ぶのか、元スカウトの方に放送席で話していただけたら面白かったのではないか。スカウトならではの視点が加わるともっと視聴者は楽しめたのではないか。
    全体的には、コロナ過で大変な思いをした高校3年生にとってはとても貴重で良い思い出になる2日間だったことが良く分かり、全ての高校球児にとっても明日へ向けてまた頑張ろうと思ってもらえる番組になっていたのではないか。来年こそは高校球児の夢の舞台である甲子園球場での春と夏の大会が見たいものである。
  • ・今年ならではのイベントで面白い番組企画であった。今回の企画に森本アナと高嶋前監督という絶妙のキャスティングに制作者の思いが伝わってきた。この番組を見て、B.グリーンバークの「ニュース伝播のJ曲線モデル」を思い出した。ケネディ暗殺のニュースに関する研究で、彼はニュースを三つのタイプに分け、Ⅰ型を小さなニュースで関係者だけに広がるもの。Ⅱ型は通常の事件、事故などのニュース。Ⅲ型は突発的で誰にも衝撃的なニュース。ケネディ暗殺は当然Ⅲ型である。この理論のポイントは、口コミで伝播する割合がⅢ型で異常に高くなり、マスメディアよりも伝播力は早くて強力だというもの。今回の番組はⅠ型でほぼ当事者しか関心を示さない。ところがⅠ型も規模は小さいものの、口コミの伝播力は大きいという。つまり、この企画も広がりはないけれど、当事者、関係者の皆には知れ渡ると考えられ、普段メディアに取り上げられない選手たちや関係者は希望と不安で見守るはずであるから、事前に告知を徹底すれば関係者のほとんどが見てくれる番組だろうと考えた。
    超マニアックな野球ファンと関係者への情報というのはもちろんとして、こうした番組で高校生の技術を素材にした野球技術論を深めるような内容にしていくと、さらに注目も広がるかもしれない。
  • ・夏の甲子園の観客とはまったく違い、気付けばあるときはスカウトマン、あるときは選手自身、そしてあるときは選手の親のような立場でオーデイション番組を見ているような感覚で視聴した。解説は淡々と数字や実績等を中心とした内容で特に印象に残るものではなかったが、分かりやすく聞きやすかった。途中、雨が降ってから室内練習場となったところ、選手たちは甲子園球場のグランドで投げたかったと思うが、こちらは野球の中継よりももっと近い距離で投球やバッティングが見られたため、球の回転や勢いなどがより伝わってきて違った意味でこんなに速くてスピードのあるスポーツだと実感出来た。適度な緊張感の中、どんどん選手が入れ替わることでもっとじっくり見たいという思いや、全力が出しきれますようにと祈る思いで面白く視聴できた。
  • ・GAORAがこの合同練習会の模様を2日にわたりすべてを中継したことは、球児やその家族にとっても、また球団のスカウトにとっても有意義であり、素晴らしい取り組みであった。
    甲子園に出場したことのない高校生にとっては、感激な機会であり、更なる夢を持てたと思う。また、今までにはない他校の野球部員との練習により各自自身の力の再認識にもつながったと思われる。
    番組においては、最初に2日間のプログラムが欲しかった。番組の中継の趣旨は分かったが、練習会全体の流れが分からなかった。解説の元智弁和歌山の高嶋先生の解説は、高校生を指導してきた経験からの目線で興味深く聞くことができ勉強になった。また、プロ出身者の狩野さん、藪さんのコメントは各選手の良いところをアピールしてくれたので好意的に聞くことができた。注目選手にスポットをあてた紹介時、各選手のアピールとこれまでの成績がテロップで表示され、さらに深く知ることができた。
  • ・この歴史的イベントをタイトなスケジュールの中、番組として企画・放送をしたことは最高に意義深いことだと確信している。とはいえ、試合の中継とは違い、ともすれば単調な放送になることは、制作者たちも十二分に考えていたのだろう。メリハリのある演出が光った。静かな空気の中にあふれる闘志、緊張感が満ちていた。
    解説者、ゲスト、それぞれに素晴らしい人選であった。あまりでしゃばり過ぎず、折に触れて視聴者がなるほどと納得できるようなエピソードを紹介してくれた。中でも私が特に殊勲として挙げたいのは、森本栄浩アナウンサーの存在だ。彼がいなかったら、この長尺の番組は凡庸で、まとまりのないものになっていたかもしれない。高校野球を熟知していればこその絶妙なバランスで番組を構築していた。アナウンサーの域を超えたプロデューサー的存在であったとも言えるのではないだろうか。インタビューに答える選手たちのクレバーさにも感心した。本当に最近の若者はしっかりしていると改めて感じた。


  • GAORAでは、これらの貴重なご意見を、これからもより良い番組をお届けしていくために大いに活用させていただきます。

    審議委員

    種子田穣委員長、影山貴彦副委員長、黒田勇委員、藤井純一委員、沢松奈生子委員、森本志磨子委員、山本泰博委員 (以上7人)