番組審議会記録

第70回GAORA番組審議会記録

第70回番組審議会は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、書面による開催としました。今回は「シャインニグ ジャパン」の中から「#21 新嶋莉奈」、「#22 宮下遥」の2話について審議を行い、委員の皆様から次のようなご意見をいただきました。


番組審議

<番組概要>
昨今、若者のテレビ離れの話をよく耳にしますがテレビにはまだまだ素晴らしいコンテンツがたくさんあります。「ぜひ若者に見てもらいたい、そして何かを感じてもらえたら」。そんな思いから、スマホやタブレットなど場所や時間を問わずに見てもらえる配信やオンデマンドなどにも対応した15分のドキュメンタリー番組が、シャイニングジャパンです。GAORAでのレギュラー放送を始めて、1年半で22話目を迎えることができました。取材対象者は全てスポーツで世界に挑戦する若者たちです。彼らの限界に挑む姿は輝いて見えますが、失敗や挫折もつきものです。たとえ成功に終わらなくとも本気で挑戦した人たちのひたむきな姿を目の当たりにすることで、ご覧になった方々が、ほんの少し勇気づけられたり、また自分ももう少し頑張ろうと思えるような、そんな輝きを持ってもらえたらという願いをタイトルに託し、制作に励んできました。

<委員長総括>
「シャイニング ジャパン」は、各委員からのコメントは大変好評価で、すべての委員から好印象が語られている。このシリーズはターゲットが明確で、すっきりと分かりやすく、全体として視聴者によい印象を与えるものになっている。15分間という短い時間が良く作用したこともあり、コンセプトが明快な好番組であったということができる。
そして、何よりも私が今回の番組の素晴らしさであると感じる点は、とかく頂点を目指し困難を乗り越える「辛さ」に焦点があてられがちなわが国のスポーツドキュメンタリー番組が多い中にあって、本番組は結果を素直に受け止め、視聴者に重さを感じさせることなく、さらりと乗り越えて次に向かう二人の選手の爽やかさを感じさせるところにある。それは、「楽しさ」に繋がるスポーツのイメージを視聴者に届けることになり、大変好感を持った。引き続く努力を求めたい。

<審議意見>委員の主な意見は次の通り。

  • ・ストレートに分かりやすく、何の抵抗もなく映像が目に入ってくる心地よさを感じた。「若い人に見てもらいたい」、「スマホやタブレットで」という制作者の思いがしっかり反映されていた。挫折や困難を乗り越えるドキュメンタリー番組はズシリと心に響くが、今回は感動の押し付けも独特の重さも感じることが無く、視聴者の心にストレートに届いた。スポーツにありがちな「根性」や「困難に立ち向かう勇ましさ」といったものでは無く、「清々しい気持ちにさせてくれる爽やかさ」を感じた。後味も良く素晴らしい企画と制作であった。
  • ・どちらも20分弱の放送とコンパクトでありながら、テンポ良く深い内容にもなっていて、もう少し観たいと思わせる内容であった。本人の話や部屋の紹介など本人の人柄もよく伝わってきて、2人ともこれからの選手で応援したいなと思わせるものがあった。
  • ・シャイニングジャパンは大変良い企画で、オリンピック開催に向けてのアスリートの心身の戦いを鑑みることができた。若いアスリートの挑戦については、メジャーなスポーツだけでなく、いろいろな種目を取り上げていただきたい。
  • ・若者に見てもらいたいという意図が分かるようなテンポが良い番組であった。コンテンツが豊富で飽きやすい若者の視聴パターンを見ていると、1本辺り15分という時間設定が非常に良かったと思う。内容については、アスリートに焦点を当てた番組は苦悩の後に成功に結び付くようなハッピーエンドが多い印象だが、実際のアスリート人生には大きな波だけではなく、日々の生活の中に小さな挫折や成長がある。今回はたとえ大きな成功に終わらなくても「本気で挑戦した人たちの日常に起きるひたむきさ」を表現していて、ターゲットとなる同世代の若者には「トップアスリート=特別な存在」ということではなく、「悩んだり苦しんだりする姿は自分たちを同じだ。」とより身近に感じることが出来たのではないか。いずれの番組も、同じスポーツ選手として毎日ひたむきに頑張っている若者の姿はコロナ過でストレスばかり貯めてしまう日常に活力を与えてくれる番組であった。若者だけでなく、多くの方々にとって「自分も頑張ろう。」と思える内容であった。
  • ・メディア環境の激動の中、CSスポーツチャンネルの努力を感じた。この番組には、スポーツ資源を発掘し、それを番組に仕上げていく意思と能力、心意気を感じてきた。グローバルなスポーツビジネスに対抗していくのは「スロー放送」でしかないと考えている。「スロー放送」とは、地域に密着する作り手が見える作品を制作していく、マイナーとされるスポーツの魅力を地道に掬い上げていく、こうした放送姿勢である。そうした意味から今回のエピソードはまさに「スロー放送」だと思う。メガイベントや人気スポーツのスターストーリーではなく、知られざるスポーツ、知られざる選手に焦点を当て、そのスポーツと選手の魅力を伝えることは、本来のスポーツ好きだけではなく、新たな人々を引き付けることにもつながると思う。
  • ・「ぜひ若者に見てもらいたい、そして何かを感じてもらえたら」という思いが、よく伝わってきたコンセプトの番組であろうと思う。今の若者のテレビ離れが、どれほど信憑性があるのか、私はいささか疑念を抱いている者のひとりだが、強く感じるのは、「長く」、「同じところで」、「受動的に何かをする」ことに関し極めて苦手になっているという事実だろう。そんな中、15分のドキュメンタリー番組という発想はとても好ましく感じる。ぜひ継続して制作に臨んでいただきたい。「ミニドキュメンタリーの雄、GAORA」と視聴者から呼ばれるほどになるまで、秀作を発表し続けて欲しい。「継続は力」だ。若者を意識して、ということと関係しているかもしれないが、今回1点申し上げるならば、要所要所でもう少し「深く」切り込んでもいいのでは?との思いが少し残った。若者は概してディープな掘り下げを好まない傾向のあることは理解しているつもりだが、あとひとさじ掘り下げがあれば、噛み応えが増すはずだ。


  • <番組説明>

    「シャインニグ ジャパン ♯21 新嶋莉奈」(ウインドサーフィン選手)  

    放送日時:2020年5月17日(日)10:40~11:00

    <内容>

    20歳の若きウインドサーファー新嶋莉奈は、普段慶應義塾大学に通う女子大生。授業が終わればすぐに地元神奈川県葉山の海に直行するのが彼女の日課だ。毎日練習を繰り返す新嶋の掌は、たくさんのマメが潰れてボコボコの状態になっていた。女子大生らしい生活を断ち切り一心不乱に鍛錬を積むのは東京オリンピックに出場したいという目標があるから。文武両道で五輪出場を狙う彼女は今年、東京オリンピック出場の最終選考にあたるメルボルン(オーストラリア)で行われた世界大会に出場した。五輪への切符を手にすることができるのはたった1人。出場に望みをかけた彼女の闘いのゆくえは・・・。

    <審議意見>委員の主な意見は次の通り。

    • ・若きウインドサーファー・新嶋選手は、目標に向かって素直に打ち込む姿勢がよく表れていた。「まだまだ経験も練習量も負けている。次は絶対」と前を向く姿に、見る側も素直に応援したくなるような番組であった。映像は新嶋選手の持つ清潔感と海、風といった自然との調和がうまく生かされており、見る側も爽やかな風を感じたのではないか。「失敗や挫折」の部分をさらりと触って涙や汗の匂いがしたかと思うと、いつの間にか清涼感に変わっている。これが映像の力なのであろうか、非常にうまく制作されていた。一方、ウインドサーフィンというマイナー競技に期待感や思い入れが無かったことで新鮮に受け止める事が出来たのかもしれないが、その意味でも取材対象として適していたのであろう。
    • ・競技のルールの説明もとてもわかりやすく、自然相手の試合で運とそれを活かす地道な練習、体力、経験が物をいう競技であることがよく分かった。また、映像からスピード感や帆などの重さ、また45度で向きを変えながら進む際に大きく移動したり体を揺らしたりなど、ダイナミックさや難しさなどがよく伝わってきた。
    • ・ウインドサーフィンがどのようなスポーツなのかまず知ることができた。彼女は、お父さんの影響で3歳かから始めたようだが、日本における競技者がどれくらいいるのか、日本の世界での位置付け等についてもう少し知りたいと思えた。彼女の努力の様子はよく伝わったが、その点が注文点である。
    • ・東京オリンピックという高いレベルに挑戦する新島さんの挫折にも大きな挫折感がなく、前を向いていることに若さを感じて爽快であった。ただ、ウインドサーフィンの競技の技術、競技方法、ルールについてはもう少し工夫した説明があれば、もっと関心が深まったと感じた。
    • ・鎌倉で育った若きウインドサーファーの姿は、あくまでも爽やかだ。大会で満足のいく成績が出なくても「自分のやれることはやった。」と語る。その姿も爽やかだ。だが、その内なる心の襞の部分を見ている者はもう少し欲しいのではないか。
    • <番組説明>

      「シャインニグ ジャパン♯22 宮下遥」(女子バレーボール選手)

      放送日時:2020年6月14日(日)10:10~10:30

      <内容>

      日本女子バレーボール界を長きにわたり牽引したセッター竹下佳江が引退してから、日本に絶対的セッターは不在だった。しかし、中田久美日本代表監督以来30年ぶりに15歳でセッターとして日本代表入りした宮下遥を、“ひさびさに天才現る”とメディアは持ち上げた。2016年正セッターとして「最低でもメダル」と期待され挑んだリオ五輪。だが、5位という結果に天才セッターと騒がれた宮下にすべてのマスコミは容赦なかった。不甲斐ないパフォーマンスと不本意な結果を責める記事に、宮下はバレーボールを辞めようと考えるほど自暴自棄の精神状態に。あれから4年、東京オリンピックを前に挫折と苦悩を乗り越えようとする彼女にカメラを向けた。

      <審議意見>委員の主な意見は次の通り。

      • ・まさしく「スポ根」がピッタリの取材対象だが、定番のレシーブ練習やコートに這いつくばるといった厳しい練習の映像は一切使わず、うまく表現されていたと思う。宮下選手はひたむきにコツコツ努力する真面目なタイプか。その彼女が「記憶から消える。」までの落胆、衝撃とはどんなものだったのか。自分のノートに書いた「どんな逆境に見舞われても信念のある人間はそれを乗り越えられる。」から彼女の苦悩が伺えた。映像では挫折の部分を必要以上に追求しておらず、どう感じるかは(年齢や経験の違う)視聴者に委ねているようにも見えた。しかも番組全体がポジティブに作られており、これなら若者に受け入れられるのではと感じた。
      • ・「宮下選手は、19歳くらいのときの番組を以前観たことがあったので、真面目で初々しい感じから、悩みや壁や挫折なども経験し、まさに一皮剥けてたくましくなり、さらにこれからも成長するのであろうと期待させる姿があった。見ている私ももう少し頑張ろうと励まされた。
      • ・15歳から岡山のプロチームに入りバレー一筋に努力してきたことがよく分かった。15歳で代表入りし、竹下選手の後継者として日本のセッターと期待され、リオオリンピックに参加し予選突破はしたものの結果5位に終わり、バレーに対して覇気が薄れていたところから、彼女の好きな言葉「どんな逆境に見舞われても、信念のある人間はそれを乗り越えられる。」をモットーに再度チャンスを取り戻してきた様子がよく表現できていた。
      • ・取材で「日の丸を背負う意味は?」と聞かれて「考えたことがない。」と答えていた彼女が、その後、紆余曲折を経て同じ質問に対しての答えが変わったのかどうかが知りたかった。
      • ・宮下さんは、有名な選手だと思いますが、インタビューでの答えに彼女なりの悩み、あるいは「闇」が垣間見えて興味深いものであった。
      • ・バレーボールのセッターの魅力を感じることができた。身長の違いによる効果の差の解説も分かりやすかった。寮生活でのオフの様子などは、バランスを考えての構成だろうが、試合の様子をもっと見たかった思いが残った。15分の難しさもあろうか。

      • GAORAでは、これらの貴重なご意見を、これからもより良い番組をお届けしていくために大いに活用させていただきます。

        審議委員

        種子田穣委員長、影山貴彦副委員長、黒田勇委員、藤井純一委員、沢松奈生子委員、森本志磨子委員、山本泰博委員 (以上7人)