ドイツカップ2026-27みどころ

8月、ドイツサッカー界にもうひとつの熱狂が幕を開ける。1935年に創設された伝統のノックアウトカップ「DFBポカール(ドイツカップ)」だ。ブンデスリーガ1部・2部の全36クラブに、3部上位勢や各州カップ覇者を加えた計64チームが、たった一度の敗戦がすべてを終わらせるトーナメントに挑む。1回戦では下位カテゴリーのクラブにホーム開催権が与えられるレギュレーションのため、毎年のように名門が地方のスタジアムで足元をすくわれる「ジャイアントキリング」が起こることで知られ、その予測不能さこそがこの大会最大の魅力といえる。
今シーズンの主役は、前回大会でVfBシュトゥットガルトを3-0で下し、史上最多となる21回目の優勝を果たした王者バイエルン・ミュンヘンだ。今夏に来日したボルシア・ドルトムントの関係者も「バイエルンとの間には力の差があると認めざるを得ない」と口をそろえていた。では、今シーズンの優勝もバイエルンで決まりかというと、そうではない。
むしろ、そんなバイエルンでさえ簡単に優勝できないのがDFBポカールなのだ。何しろ、昨シーズンの優勝は実に6年ぶりのものだった。その前の5シーズン続けて、絶対王者はこのタイトルに手が届かないでいたのだから。しかも、今シーズンのバイエルンはくじ運が“悪い”。他のブンデス1部のクラブの多くが3部以下のチームとの対戦なのに、バイエルンは1回戦で2部の伏兵VfLオスナブリュックと戦わないといけない。過去にも王者が初戦で姿を消した例は少なくなく、油断は許されない。
昨シーズンの準優勝クラブであるシュトゥットガルトの相手もやっかいだ。熱狂的なファンを持ち、移動するだけでも大変なドイツ北東部に本拠地を置く3部のハンザ・ロストックになる。優勝候補の一角であるドルトムントも、アマチュア勢のHEBCハンブルクとの一戦から戦いを始めることになる。
ドイツ3部からは13クラブが1回戦に進出しており、地域の小さなスタジアムがビッグクラブを迎え撃つ光景も各地で見られるだろう。近年の優勝クラブを振り返ると、RBライプツィヒ、シュトゥットガルト、バイヤー・レバークーゼンと毎シーズンのように顔ぶれが入れ替わっており、「絶対王者不在」の混戦模様こそがこの大会の醍醐味といえる。アウェーの厳しい雰囲気の中でリーグ戦とは違う緊張感を強いられるのがポカールの怖さであり、面白さでもある。
もうひとつの注目点は、リーグ戦では見られない世代交代のドラマだ。控え組や若手にチャンスが巡ってくることの多いこの大会では、次世代のスター候補が一躍脚光を浴びる舞台にもなってきた。強豪クラブがどのようなメンバー編成で臨むかも、シーズン序盤の戦力を占ううえで見逃せないポイントだ。
1回戦は8月21日から24日(*全て現地時間。バイエルンとドルトムントはスーパーカップの日程調整で9月1日・2日に開催)、その後2回戦、ラウンド16(12月)、準々決勝(2027年2月)、準決勝(同4月)を経て、決勝は2027年5月29日にベルリンのオリンピアシュタディオンで行われる。優勝クラブには翌シーズンのヨーロッパリーグ出場権も用意されている。
もちろん、日本人としてもこの大会には多くの楽しみがある。ブンデスリーガを筆頭に、ドイツで日本人選手がプレーする数は多い。とりわけ、今シーズンの注目はフランクフルトとフライブルクだ。
8月21日の25時に先陣をきってフランクフルトとザンクトテニースの試合が放送されるがフランクフルトの注目は、日本代表で10番を背負う堂安律だけではない。2028年のロス五輪を目指す年代別の代表チームのキャプテン候補の一人である小杉啓太がいる。昨シーズン途中に加入してからのハーフシーズンは苦しい時間を送ったが、今シーズンから就任したアディ・ヒュッター監督が高く評価。プレシーズンでは好パフォーマンスを見せ、左サイドバックの一番手としてプレーしており、大ブレイクの予感が漂っている。
また、8月23日の25時から放送される試合でデュッセルドルフと対戦するフライブルクには、日本とゆかりのある選手が4人もいる。まず、鈴木唯人は昨シーズンからチームの中心として君臨して、エースと目されている。さらに今シーズンからは山本理仁、後藤啓介、そして日本人の母を持つミオ・バックハウス(長田澪)の3選手が加入。4人が同時にピッチに立つ可能性も十分にあり、日本人としては見逃すわけにはいかない試合だ。
GAORAでは今シーズンから、この全63試合をGAORAオンデマンドで独占配信するほか、CS放送のGAORA
SPORTSでも注目カードをテレビ独占放送する。普段はブンデスリーガの舞台に立たないアマチュアクラブの熱狂も、強豪相手に一世一代の大金星を狙う地方クラブのドラマも、リーグ戦だけでは味わえないポカールならではの魅力だ。伝統と波乱が同居するドイツカップの熱戦を、8月の開幕戦から来年5月29日の決勝まで、ぜひ見逃さずにお楽しみいただきたい。