伝統と狂気が同居する「DFBポカール」の魅力

ドイツカップ(DFBポカール)は、アマチュアクラブからブンデスリーガ1部のメガクラブまで、計64クラブが完全な一発勝負のノックアウト方式で頂点を争う、日本でいうと「サッカー天皇杯」にあたる伝統的なカップ戦です。1回戦は下位チームにホーム開催権が与えられるため、ジャイアントキリング(下剋上)が毎年のように起こるのが最大の魅力です。
昨シーズン(2025-26)のトーナメントも、1回戦からその「ポカールの魔物」が牙を剥きました。強豪クラブが地方のアマチュアクラブや3部の伏兵を相手に冷や汗をかく展開が続出。その過酷なサバイバルトーナメントの中には、ドイツの地で自らの価値を証明し続けた多くの日本人選手たちの熱き戦いがありました。
大会を熱く沸かせた日本人選手たちの足跡
2025-26シーズンのDFBポカールは、多くの日本人選手が各クラブの核としてピッチに立ち、強烈なインパクトを残しました。
佐野海舟(1.FSVマインツ05):ブンデスを震撼させる日本産ダイナモ

マインツ移籍後2シーズン目となったこの大会での1回戦、ドレスデンとの戦いにボランチで先発出場した佐野海舟選手。中盤の底で強固なフィルター役となり相手のカウンターを潰し続けました。前半アディショナルタイムには、こぼれ球から約20メートルの鋭いミドルシュートを放ち攻撃面でも活躍、1-0の勝利に貢献しました。2回戦では前回王者のシュツットガルトと対戦、1回戦に続きボランチでフル出場し、強力な中盤を相手にハードワークを続けましたが、2-0で敗れ、この大会を去ることになりました。
【佐野海舟出場】
<1回戦>ドレスデン vs マインツ
7月12日(日) 20:00 ~放送
<2回戦>マインツ vs シュツットガルト
7月1日(水) 00:00 ~配信開始
堂安律(アイントラハト・フランクフルト):衝撃の開幕と、名勝負での躍動

フランクフルトの攻撃を牽引した堂安律選手は、1回戦のFVエンガース07戦からエンジン全開でした。チームが5-0と大勝したこの試合で、堂安選手はなんと「2ゴール1アシスト」を記録。圧倒的なパフォーマンスを披露し、最高のスタートを切りました。
しかし、2回戦で早くもメガクラブであるボルシア・ドルトムントとのビッグマッチが実現。この事実上の決勝戦とも言える試合で、堂安選手は右サイドからの鋭い仕掛けと驚異的な運動量で120分間ピッチを躍動し続けました。試合は延長戦でも決着がつかず、激闘の末にPK戦(スコア2-4)で涙をのむ結果となりましたが、堂安選手がドイツ国内に与えたインパクトは今大会屈指のものでした。
【堂安律出場】
<1回戦>エンガース vs フランクフルト
7月1日(水) 00:00 ~配信開始
<2回戦>フランクフルト vs ドルトムント
7月17日(金) 19:00 ~放送
町野修斗(ボルシア・メンヒェングラートバッハ):新天地での覚醒と進化の証明

ボルシアMGに所属する大型ストライカー・町野修斗選手も、ポカールの舞台で自らの価値を証明しました。1回戦のSVアトラス・デルメンホルスト戦(3-2で勝利)を経て迎えた2回戦のカールスルーエSC戦。町野選手は前線での力強いポストプレーと絶妙なポジショニングを披露し、見事に「移籍後初ゴール」をマーク。チームを3-1の快勝へと導きました。
【町野修斗/福田獅王出場】
<2回戦>ボルシアMG vs カールスルーエ
7月18日(土) 19:00 ~放送
続く3回戦では、日本人選手を多く擁するFCザンクトパウリとの激しいコンタクトマッチに挑みました。町野選手は最前線で身体を張り続けましたが、試合は1-2で惜敗。ここでトーナメントを去ることになりましたが、ストライカーとしての凄みを増した町野選手のポカールでの戦いぶりは、今後のリーグ戦に向けた大きなステップとなりました。
【町野修斗/藤田譲瑠チマ出場】
<3回戦>ボルシアMG vs ザンクトパウリ
7月19日(日) 19:00 ~放送
鈴木唯人(SCフライブルク):絶対的なタクトを振り、準決勝まで駆け抜けた新星

今大会、決勝進出の一歩手前まで最もドラマチックな快進撃を見せたのが、SCフライブルクの鈴木唯人選手です。1回戦のシュポルトフロインデ・ロッテ戦(2-0)でトップ下として先発出場を果たすと、チームの攻撃のタクトを完全に掌握。2回戦のフォルトゥナ・デュッセルドルフ戦(3-1)では、前線への鋭いラストパスから「移籍後初アシスト」を記録し、勝利の立役者となりました。
3回戦ではSVダルムシュタット98を2-0で退け、迎えた準々決勝のヘルタBSC戦。アウェイの地で一進一退の攻防が繰り広げられる中、鈴木選手は120分間フル出場。延長前半に先制ゴールを決める活躍を見せ、PK戦のキッカーも務め勝利に貢献し、準決勝進出を掴み取りました。
準決勝では惜しくもVfBシュツットガルトの前に屈したものの、鈴木選手がフライブルクの絶対的な中心として見せた輝きは、今大会のハイライトの一つです。
【鈴木唯人出場】
<準々決勝>ヘルタ vs フライブルク
7月20日(月) 19:30 ~放送
伊藤洋輝(FCバイエルン・ミュンヘン)が手繰り寄せた、絶対王者バイエルンでの完璧なるシナリオ

移籍直後のシーズンで決勝戦まで昇りつめ、バイエルンのディフェンスリーダーへと成長を遂げた伊藤洋輝選手。今シーズンのバイエルンのポカールロードは、決して平坦なものではありませんでした。
- 1回戦: SVヴェーエン・ヴィースバーデンを相手に3-2と苦戦しながらも競り勝つ。
- 2回戦: 1.FCケルンを4-1で圧倒。
- 3回戦: 堅守を誇る1.FCウニオン・ベルリンとのアウェイゲームを3-2の接戦で制す。伊藤洋輝は後半出場。
- 準々決勝: 強豪RBライプツィヒを2-0の完封でシャットアウト。伊藤洋輝は後半出場。
- 準決勝: 宿敵バイヤー・レバークーゼンとの激しい戦いを制し、決勝の切符を獲得。
決勝戦・最大の見所:バイエルン vs シュツットガルト
伊藤洋輝を巡る「宿命の古巣対決」
最大のストーリー、それは伊藤選手にとって今回の対戦相手が「VfBシュツットガルト」であるという点です。伊藤選手は昨シーズンまでシュツットガルトの中心ディフェンダーとして活躍し、その突出したパフォーマンスが評価され、2025-26シーズンはバイエルンへ移籍しました。
自身を欧州トップレベルの選手へと育て上げてくれた古巣であり、かつての戦友たちが並ぶシュツットガルトを相手に、移籍1年目で国内最大のカップ戦タイトルを懸けて戦うというドラマチックな図式が実現しました。
5月23日に首都・ベルリンで行われた2025-26シーズンの決勝戦、前半こそ両チーム中盤の強固な守備で0-0の膠着状態が続きましたが、後半10分にこのシーズン絶好調だったイングランド代表ハリー・ケインが先制点を奪取。その後なんとハットトリックを達成し、3-0でバイエルンが勝利。ハリー・ケインはこの大会で1回戦から決勝戦まで全試合でゴールを決めた史上3人目の選手となりました。試合後半には日本代表の伊藤洋輝もピッチに登場、2023-24シーズンまで所属していたシュツットガルトとの古巣対戦で、歓喜の瞬間をピッチ上で迎えました。
【伊藤洋輝出場】
<3回戦>ウニオン・ベルリン vs バイエルン
7月1日(水) 00:00 ~配信開始
<準々決勝>バイエルン vs RBライプツィヒ
7月1日(水) 00:00 ~配信開始
<決勝>バイエルン vs シュツットガルト
7月26日(日) 19:00 ~放送