[書籍紹介]WBC優勝監督・栗山英樹『栗山ノート2 世界一への軌跡』が、7月18日発売!

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GAORA文庫

posted2023年6月13日 12時06分

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2019年10月に刊行された『栗山ノート』は刊行から3年以上の時を経て、2023年3月のWBC優勝決定後、一気に11万部のベストセラーとなっております。この本は『栗山ノート』の続編であり、WBC日本代表監督に任命されてから優勝するまでの日々を、著者自身が振り返り検証した唯一の記録です。

■刊行に際して、栗山英樹氏のメッセージ

多くの方々に感動してみていただいたWBC。あらためて、応援してくださった皆さんに心からの感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

期間中の自分が何を考え感じていたのか、実際はこんなことがあった、などの裏側をお伝えすることが良いのか悪いのか、正直わからないのが本音です。

でも皆さんから「ぜひ、激闘の裏側を知りたい」という多くのお言葉をいただき、きちんと次世代に伝える必要性を感じ、僭越ながら未来のためにと一冊の本にさせていただきました。

WBCの期間中から6月にかけて、時間を見つけては自分自身で必死に書き記していった中で、なんとなく通り過ぎていった一場面一場面の意味を深く思い出したり、あらためてその真意を理解したりと、非常に気づきの多い日々でした。表現できうるものはすべて表現したつもりです。

ただすべては僕の感覚。僕が見たもの、感じたものでしかありません。選手やスタッフからしてみたら一人一人違って、全然僕が見えていないものが見えていたと思います。だから本当にこの本は、僕が見たものの記録です。

前作の『栗山ノート』に続き、古典からの引用が多く、偉大な先人の教えをたくさん紹介しています。しかし、あまり仰々しく取らないでいただきたいと思います。

ちょっと偉そうに書いていますけど、ご勘弁ください。僕自身が、書き終わった今も「偉そうだな」と思っているんですから。正直に言うと、「書いて良かった」とはあまり思えないところがあります。僕のような人間が遺して良かったのだろうか、と。

だからこそでしょうか。今をすごく幸せに感じていられる方よりも、人生の何かに困っていたり、何かに挑戦しようとしていたり、ちょっとモヤモヤしているような方々にこそ、読んでいただけたら嬉しいのです。

僕が毎日のたうち回っている中で浮かんだ言葉や考え方は、そんな方々にも参考にしていただけるのかもしれない。そんな想いで書き上げました。

■『栗山ノート2 世界一への軌跡』本文一部抜粋

「はじめに」より

22年1月からの野球ノートには、試合のことがほとんど書いてありません。WBCの開幕は1年以上も先で、強化試合も22年11月まで組まれていなかったからです。

それでも、ノートはいつもどおりのペースで埋まっていきました。

中国の古典『四書五経』の『大学 伝二章』に、「湯の盤の銘に曰く、苟に日に新たにせば、日々に新たに、また日に新なりと」とあります。中国の殷の王は、洗面器にこの文字を刻み、顔を洗うたびに自らに問いかけたと言われています。

侍ジャパン監督としての真剣勝負がまだ先だからといって、日々をぼんやりと過ごしていたら成長はありません。「いざは常、常はいざなり」の心持ちで、これから直面するであろう課題や難題を想定して、緊張感を持って過ごす。昨日よりも今日、今日よりも明日と、少しでも成長できるように自分の行動を見つめていくと、ノートに書くことはいくらでも見つけることができました。

いたらない自分、成熟していない自分、中途半端な自分、気づけない自分を認識した私は、戒めとなる言葉を様々な書物から抜き出し、ノートに書いていきます。何度も書き写している言葉もあります。自分の未熟さを痛感させられますが、そうやって同じ言葉を何度も書くことで、その言葉の意味や本質が身体に刻まれていくのだと、自分を叱咤します。


第4章より

ヌートバーを送り出す私は、結果についての責任はすべて自分が取ると改めて決意し、森信三先生の「根本眼目」に対する教えを心のなかで詠んでいました。

私たちの本質的な目標は、WBCで世界一を奪還することです。その目標へ邁進している選手を信じて支えることが、私自身がもっとも重きを置くべきものです。つまりは根本眼目です。

部下を持つ上司なら、「この仕事を彼(彼女)に任せるのは、まだ少し早いかもしれない」と思う場面があるでしょう。スポーツのチームを率いる指導者なら、「この選手を使うのは、もう少し先のほうがいいかもしれない」と悩む場面があるのでは。子どもから何かをやりたいとせがまれた親なら、「まだちょっと危ないな」と心配する場面があるでしょう。

失敗をしてほしくない。自信を失ってほしくない。ケガなどをしてほしくない。相手を思う深さが慎重な判断につながるのですが、同時に、相手を信じることも忘れたくありません。「できる」とか「やりたい」という相手の気持ちを尊重して、何があっても動じない気持ちを育てておきたいのです。


第5章より

栗林と話をするにあたって、私は森信三先生の「長の心得」を心のなかで復唱していました。とりわけ、「一旦、事が起こった場合には、身を持って部下をかばうだけの一片の侠気ともいうべきものがなくてはならぬ」という言葉が、胸の奥深くまで染み込んでいきました。

痛みに耐えてもチームの勝利に貢献したいという栗林の思いを受け入れ、彼にとって最善の選択をする。森先生が言う「身を持ってかばう」ということは、彼の未来に小さな影さえ落とさない選択をする、ということでした。もちろん、栗林が批判されるようなことが起こったら、その矛先をクリではなく自分へ向けさせる、ということも忘れてはなりません。

森先生は「一片の侠気」と書いています。苦しんでいる人や立場の弱い人を見過ごせない気持ち、そういう人たちを助けようとする気性のことです。「男気」と言われることもありますが、お母さんがお子さんを慈しむとか、お姉さんが弟さんや妹さんを気にかけることも、侠気に似たものがあるでしょう。


第6章より

打席に立つのは村上宗隆です。ここで打ってほしいという場面で期待に応える彼を、何度も見てきました。それこそが村上らしさなのですが、第1打席と同じ三振に倒れます。

メキシコに先行された直後に追いつけば、試合の流れを引き戻すことができます。村上もそれは十分に理解していたはずで、だからこそ三振に倒れたことが悔しかったでしょう。責任感の強い選手だけに、次打席以降のバッティングが強引にならなければいいのだが、と願うばかりでした。

私自身は『論語』の「剛毅木訥、仁に近し」の心境でした。とりわけ、メキシコに恐れることなく立ち向かい、この苦難を耐え忍んで勝利へ邁進するという意味で、「剛」と「毅」の二文字を強く意識していました。

■【著者プロフィール】

栗山英樹(くりやま・ひでき)

1961年生まれ。東京都出身。創価高校、東京学芸大学を経て、1984年にドラフト外で内野手としてヤクルト・スワローズに入団。1年目で1軍デビューを果たす。俊足巧打の外野手で、89年にはゴールデングラブ賞を獲得。1990年のシーズン終了後、怪我や病気が重なり引退。引退後は解説者、スポーツジャーナリストとして野球のみならずスポーツ全般の魅力を伝えると同時に、白鴎大学の教授として教鞭を執るなど多岐にわたって活躍。2011年11月、北海道日本ハムファイターズの監督に就任。同年、監督1年目でパ・リーグ制覇。2016年には2度目のリーグ制覇、そして日本一に輝き、正力松太郎賞を受賞。2019年時点の監督で最長の就任8年目を迎え、同年5月、監督として球団歴代2位の通算527勝を達成。2021年、北海道日本ハムファイターズ監督を退任。2022年、WBC日本代表監督に就任。2023年3月、WBC優勝。2023年5月、WBC日本代表監督を退任。

■【書誌情報】

書名:栗山ノート2 世界一への軌跡
著者:栗山英樹
発売日:2023年7月18日
定価:1500円+税
発行:光文社

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