第94回選抜高等学校野球大会 準々決勝を終えて
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posted2022年3月29日 9時30分
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熱戦が続く「第94回選抜高等学校野球大会」。準々決勝を終えての総括をスポーツライター・小関順二さんに寄稿していただきました。
投打ともにスキのない大阪桐蔭
2回戦が終った時点でホームランはわずかに3本。大会前にホームランが期待された佐々木麟太郎(花巻東2年)、真鍋慧(広陵2年)が不発のまま甲子園をあとにし、今大会はもうホームランが出ないかもしれないと愚痴っぽくなっていたのが昨日のこと。それが準々決勝・第1試合の「浦和学院対九州国際大付」戦で浦和学院の伊丹一博(3年)、鍋倉和弘(3年)にホームランが飛び出すとわずかに気持ちが晴れやかになり、「どうして浦学のバッターの打球は伸びるのだろう」とパワーの背景に思いをめぐらすようになっていた。
3試合目の「国学院久我山対星稜」戦で下川邊隼人(国学院久我山3年)に2ランが飛び出し大会通算6本目。2ケタに届くかもしれない、と欲はどんどん深まっていく。4試合目の「市和歌山対大阪桐蔭」戦は、強打の大阪桐蔭でも花巻東、明秀日立の強力打線を封じた米田天翼(3年)が相手では一発攻勢は期待できない、というのが常識的な予想だったが、1回戦の鳴門戦で早いカウントから打って出る好球必打で好左腕、冨田遼弥(3年)を攻略しているので、「ひょっとしたら」という思いはあった。
4回までは市和歌山の先発、淵本彬仁(3年)の高低の攻めに2点に抑えられていた。それが5回に2番谷口勇人(3年)が先頭打者ホームラン、さらに2死二、三塁で7番星子天真(3年)が3ランを放つと、勢いが止まらなくなった。6回に先頭打者の1番伊藤櫂人(3年)がレフトスタンドに放り込み、代打の工藤翔斗(3年)が2ラン、打者一巡して走者を一塁に置いて伊藤が2打席連続ホームランを放ち、6回が終了した時点で14対0の大差がついていた。7回にも5番海老根優大が左中間に2ランを放つが、クリーンアップが放ったホームランはこれが初めて。それ以外は1番、2番、7番、8番(代打)によるスタンド越え。こういうところが大阪桐蔭の凄さ、というか怖さだろう。
投手ではエース格の左腕、前田悠伍(2年)が初めて甲子園のマウンドに上がった。ストレートの最速は143キロと普通だが、130~143キロのスピード差で四隅を突き、フォークボール、チェンジアップ、スライダーなど高低を投げ分ける変化球の精度もピカ一。6回まで毎回の12三振を奪い、打たれたヒットはわずかに1本。この前田にリリーフした背番号1の別所孝亮(3年)、鳴門戦で完投した川原嗣貴(3年)が揃い、本当にスキが見つけられなくなった。彼らをリードする捕手の松尾汐恩(3年)が6回の守りからショートに就き、軽快なフィールディングを見せるなど多彩なタレントが揃った。優勝候補の筆頭と言っていいだろう。