第94回選抜高等学校野球大会 準決勝を終えて

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小関順二

posted2022年3月30日 18時00分

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 準決勝2試合目が始まる前、野球愛の強さで知られるお笑い芸人、いけだてつやさんと顔を合わせ、国学院久我山をコーチしたイチロー氏のことが話題になった。やはりコーチした智弁和歌山が昨年夏の甲子園大会に優勝して、今大会は国学院久我山が準決勝に進出。驚異的な〝イチロー効果″と言うほかない。直接コーチングした技術的なことが血肉になったと言うより、イチローという超一流の野球人に触れたことで心理的・精神的な部分に化学反応が起こり、実力以上のものが生み出されたのだろう。別れ際、智弁和歌山の面々に言い残した「ちゃんとやってよね」は、いい余韻を残す金言である。何よりも笑いが起こったのが素晴らしい。いけださんも「素晴らしい」と絶賛していた。

 そのイチロー効果も大阪桐蔭の破壊力には及ばなかった。1回表、打ち取られたが1番伊藤櫂人(3年)と3番松尾汐恩(3年)が放った外野フライはいずれもフェンス際に到達し、その後の猛爆を予感させた。この1回は2死一塁から4番丸山一喜(3年)、5番海老根優大(3年)、6番田井志門(3年)が安打を連ねて3点を先取。3回には3番松尾から6番田井まで4連続安打で3点、さらに8番鈴木塁にも2点二塁打が飛び出し、ほぼ勝敗の行方は見えた。素晴らしかったのは先日も触れたように大阪桐蔭各打者の積極的なバッティング。〝好球必打″は同校のキャッチフレーズのように言われるが、近年はこれほど積極的に打って行かなかった。それがこの試合では19安打のうちファーストストライクを打ったヒットは8本あった。

 この好球必打がゲーム中盤には国学院久我山にも波及。6回裏に3安打を連ねて2点を返すのだが、9番萩野颯人(2年)、1番齋藤誠賢(3年)、3番木津寿哉(2年)のヒットはいずれも初球を打ったもの。この回に投じられた13球のうちストライクの見逃しが1球だけというところに好球必打の効果の絶大さがわかる。

 大阪桐蔭の先発、川原嗣貴(3年)は1回戦以来のピッチングだったが、素晴らしかった。やはり野球愛の強いお笑い芸人、かみじょうたけしさんと記者席あたりで話をし、かみじょうさんは川原を見るなり「藤浪(晋太郎)に似てません?」と言い、私は「ああ似てますね」と返し、頷き合った。決勝が前田悠伍(2年)の先発が予想されているため、こんなに素晴らしい川原を「もう見られないかもしれないんですね」と少ししんみりした。市和歌山戦に続く波状攻撃を目の当たりにし、思い出されるのは1回戦の鳴門戦。この強力打線も8安打、3失点に抑えた左腕、冨田遼弥(3年)は本当に見事だった。