ファイナルステージ進出を目指す東レ。髙橋健太郎が見つめ直した「コートに立つ自覚と責任」

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米虫紀子

posted2023年1月26日 13時00分

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2022-23シーズンV.LEAGUE DIVISION1 MEN(V1男子)は、レギュラーラウンド後半戦に突入した。ファイナルステージ進出争いは、例年以上の大混戦となっている。上位7チームが僅差でひしめき合っており、わずか4つのファイナルステージ進出枠をめぐり、今週末も激しい戦いが繰り広げられそうだ。

 特に熱い試合が期待されるのが、東レアローズ(4位・13勝7敗)対ジェイテクトSTINGS(6位・11勝9敗)戦。東レにとっては、昨年12月に開催された天皇杯決勝のリベンジを果たすチャンスとなる。

 その天皇杯の大会中、優勝に向けて誰よりも強い意気込みを語っていたのが東レのミドルブロッカー・髙橋健太郎だった。

「昨年(2021年)すごく悔しい思いをしたので。昨年の天皇杯は、藤井(直伸)さんと、優勝するという目標を掲げてやっていたんですけど、準決勝でウルフドッグス名古屋に負けてしまった。あの時は本当に悔しくて、その晩に藤井さんと『もう絶対に次は負けたくない。来年絶対リベンジしよう』という話をしていたので、この大会は僕にとってすごく大事な大会。もう絶対負けたくないし、負けるわけにはいかないんです」

 東京五輪日本代表セッターの藤井は、東レでは主将も務め、2021年の天皇杯でも核となってチームを牽引した。だが昨年2月、胃がんを患っていることを公表し、コートを離れ治療に専念している。

 それでも東レやチームメイトのことを気にかけ、髙橋も頻繁に連絡を取り合っているという。

「藤井さんは僕のメンターです。まめに連絡をくれて、毎回熱い言葉をかけてくれるので、メンタル的にすごく助けてもらっています。この天皇杯の前も『絶対、迷いなくやることだよ』というアドバイスをもらったから、もう迷いはないし、絶対に優勝するしかないと思っている。藤井さんに対するギフトが、モチベーションだと思うんです。僕がこうやって言葉をかけてもらったり、いろいろなものをもらっている分、僕はモチベーションを上げて、優勝することで返す。それが彼にとってはすごくいい薬になるんじゃないかなと思うので」

昨年のネーションズリーグなどで日本代表としても活躍した髙橋は、身長202cmの高さに加え、パワーや身体能力でも海外の大型ミドルブロッカーに匹敵するスケールがある。

 腰の怪我のため、10月に開幕したVリーグの序盤戦は出場機会が少なかったが、天皇杯に向けてはコンディションも上がり、先発出場。東レは、2回戦で全日本インカレ優勝の筑波大、準々決勝で堺ブレイザーズ、準決勝で東京グレートベアーズに勝利し、前年届かなかった決勝進出を果たした。

 だが決勝では、ジェイテクトの強力なサーブに終始おされ、やりたいことが何もできないまま、セットカウント0-3で敗れた。

「今日は本当に情けないの一言」。

 開口一番に髙橋はそう口にした。

「せっかく決勝に行くことができて、自分たちが目指している優勝に一歩近づけたんですけど、そのチャンスをムダにしてしまったというか、不甲斐ない結果になってしまって、応援してくださった方々に申し訳ない気持ちが強いです。今日のパフォーマンスというのは、ちょっと、僕の中でも思うところがいろいろあります。プレーしたくてもできない選手がいる中で、僕たちは代表して東レのコートで戦っている。その自覚と責任が、足りないことはないんですけど、そういうところがもっと出せれば。すごく自分たちの弱いところが出ているなと感じました」

 持てる力をぶつけて敗れたというよりも、何も出し切れないまま終わったという、不完全燃焼の悔しさがあふれた。

 アウトサイドの富田将馬や小澤宙輝も、現実を受け入れられないでいるような表情で「何もできなかった」「手も足も出なかった」と絞り出した。

 髙橋は“チーム”で戦う必要性を強調した。

「うちの武器はサーブなので、サーブで崩して、ジェイテクトの両サイドの柳田(将洋)選手、西田(有志)選手のスパイクを封じたかったんですけど、相手のサーブレシーブが耐えていたし、しっかり返ったところでセッターの関田(誠大)選手がしっかり両サイドをうまく使って、速い展開でコンビを組まれた。その中で僕たちのブロックディフェンスの、どこを抜かせてどこを拾う、ここはブロックで触らないといけない、というパターンがすごく後手に回った。試合中に何回も何回も、『ここやられすぎているから対応しよう』という感じで、追いつかなかった。

 チームとしてトータルディフェンスで試合をしなきゃいけない相手に対して、個々のブロックで試合した結果、どこも止められなかったし、どこも拾えなかった。今後の試合もそうですけど、個の能力でどうにかしようとするんじゃなくて、チームでやらないと。今日の反省は本当にそこだなと思います」

 悔しい敗戦だったが、タレント揃いのジェイテクトに対して、やるべきことが明確に見えた試合でもあった。

 そしてそのリベンジのチャンスは、まもなくやってくる。

1月28、29日にウィングアリーナ刈谷で行われるジェイテクト対東レ。現在11勝9敗の6位で、ファイナルステージ進出のためには上位チームを蹴落としていかなければならないジェイテクトにとっても、負けられない試合だ。

 東レが狙い通りサーブからのトータルディフェンスでジェイテクトの攻撃力を封じるのか、それとも再びジェイテクトがサーブと攻撃で主導権を握るのか。互いの持ち味がぶつかり合う白熱の攻防は見逃せない。




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GAORA SPORTSでは、VリーグDIVISION1の男女好カードを生中継中心にお届けしている。
1月28、29日の「ジェイテクト vs 東レ」をいずれも午後4時から生中継するほか、
2月は女子の4試合を放送。