「考え方が変わるだけで、プレーもこんなに変わる」成功体験を得た山田二千華(NEC)が期待される理由とは

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米虫紀子

posted2023年3月8日 17時30分

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「過去イチのプレーでした」

 NECレッドロケッツのミドルブロッカー・山田二千華は、昨秋オランダとポーランドで開催された世界選手権を振り返り、こう笑っていた。

 日本がベスト8進出を果たした世界選手権で、山田は大きな存在感を発揮した。特に活躍が際立ったのが、強豪・ブラジルとの2試合だった。1次ラウンドの対戦では、劣勢だった第4セット12-14から、山田のサーブで揺さぶって6連続ブレイクにつなげ、一気に逆転。ブラジルからの5年ぶりの勝利に貢献した。ブラジルとの再戦となった準々決勝では、フルセットの末に惜敗したものの、山田は7本ものブロックポイントを挙げ、計19得点をたたき出した。大会を通して、大きな成長を見せた。

数字だけでなく、積極的にトスを呼び込んだり、サーブで攻めたり、得点を決めて喜びを全身で表現するなど、アグレッシブな姿勢もチームに好影響をもたらした。

 周囲も山田の変化を感じていた。日本代表の主将で、NECのチームメイトでもある古賀紗理那はこう語っていた。

「変わったなと思いますね。オフェンスの意識もすごく高くなりましたし、とても成長しているなと感じます。人って、きっかけがあれば変わるので、何かきっかけがあったのかもしれないですね」

 山田にとって、そのきっかけの一つとなったのが、昨年の日本代表で眞鍋政義監督にかけられた言葉だった。

「山田に必要なのはプラス思考。そこが変われば、お前は絶対に変わる」

 ことあるごとにこう説かれた。

「期待されているのを感じたし、そういう言葉をかけてもらって、スイッチを切り替えられたかなと思います」と山田は振り返る。

山田は2019年に行われたU20世界選手権優勝メンバーの1人。2021年の東京五輪にも21歳で選出された。だが五輪ではわずかな出場に終わり、悔しさを噛み締めた。

「自分から何もできなかった。オフェンスも積極的に行けなかったし、全部がマイナスな感じだった。自分から何かしらアクションを起こさないと、周りはわかってくれないのに。そんな自分が嫌すぎて、五輪後は、絶対に今までの自分には戻らないように、と意識するようになりました。変わらないとダメだなと思いました」

 変わろうとしていた山田に、眞鍋監督の“プラス思考のススメ”は響いた。

 世界選手権に臨む時には、「こういう舞台はなかなか経験することができないので、出し切れなかったらもったいない。損しないように、自分ができることを出し切ろう」とプラス思考で考えられるようになっていた。

 そうして臨んだ大舞台で、「過去イチ」のプレーを発揮できたことは、大きな成功体験となった。

「以前は、『こうしちゃったらどうしよう』みたいなマイナスの考えのほうが多かったんですけど、そういうことを考えていても次につながらないなと、すごく感じた。世界選手権を通して、そういうものはいらないもの、ムダなものだとわかった。考え方が変わるだけで、プレーもすごく変わるんだなと、自分自身、ものすごく実感しました」

帰国後のVリーグでは、特に攻撃面で自信を持ってコートに立てるようになったという。

「世界選手権で、自分自身、オフェンスが強みになった部分があったので、今季NECでも、2枚時(前衛の攻撃枚数が2枚の時)も活躍できているのかなと。(セッターの)前のクイックも打てるし、ワンレグ(ライト側のブロード攻撃)も打てるという、攻撃の幅があるミドルを目指してやっていきたいと思っています」

 メンタル的にも、「負のオーラにならないように」自分自身をコントロールすることを意識していると語っていた。

 NECは、昨年12月の皇后杯で優勝を飾った。ただその大会中、NECの金子隆行監督は山田についてこう話していた。

「代表の頃に比べたら、まだ眠ってるんじゃないですかね。あのブラジル戦の活躍を見たら、そう感じてしまいますよね。もちろん一生懸命やっているんですけど、あれを見せたからには、あれ以上のものが期待されていくというのはしょうがないと思う。彼女にはまだまだ無限の可能性があるので。ポテンシャルは非常に高いし、まだ22歳(当時)。ここでどれだけ脂をのせていけるか。代表、自チーム関係なく、環境面を自分でどれだけ作っていけるかによって、もっと成長していくんじゃないかと思う。うちのミドルはVリーグの中でもトップクラスだと思っているので、その中心として、期待していきたいなと思っています」

 代表、NECでチームメイトのミドルブロッカー・島村春世も「(世界選手権は)覚醒じゃないんです。山田はもとからあれだけできる選手。だからこそ、今ちょっと足りないよね、というところがある。そのスイッチは、外から入れてもらうんじゃなくて、自分で入れなくちゃいけない。まだまだできます、あの子は」と愛ある叱咤激励を送っていた。

1月に再開されて以降のVリーグでは、コンディションの様子を見ながらの起用となっているが、出場した際には高いスパイク決定率を残し存在感を発揮している。ファイナルステージ進出がかかる残り5試合とその先は、山田のさらなる活躍に期待がかかる。

 ファイナルステージに進出できるのは上位4チームのみ。現在NECは5位で、4位久光スプリングスとの差はわずか1勝。終盤戦は、今季チームとして徹底的に磨き、皇后杯優勝に押し上げたサーブ力がカギになりそうだ。レギュラーラウンドの最終レグである3レグを迎える前、島村は終盤戦の戦いのポイントについてこう話していた。

「やっぱりサーブは引き続き、自分たちの強みとしてやっていくことと、サーブで崩して相手がCパスになった時のブロックディフェンスというのも自分たちの武器だと思うので、そこからの切り返しでどれだけ点数を取れるかが重要。そこの精度はもっと追求できると思う。自分たちはチャレンジャーなので、どんなことにもトライしていくし、日々成長できるような3レグにして、優勝を、目指すんじゃなくて“獲るんだ”という、そこの目標はぶれずにやっていきたい」

 古賀も「私たちの順位的に、厳しい戦いがこれから先続いていきますが、そういう試合さえも楽しんで、自分たちが成長する場だという気持ちでプレーすることが、自分たちが強くなっていく上ですごく大切なこと」と語っていた。

「負けられない」と、否が応でもプレッシャーはかかるが、それさえも楽しみ、成長につなげていく。

 

 今週末、NECはジップアリーナ岡山で行われる2位JTマーヴェラス、10位岡山シーガルズとの重要な2連戦に臨む。この他、各地で繰り広げられるファイナルステージ進出をかけた熱戦から目が離せない。

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3月は「JT vs NEC」、「岡山 vs NEC」など、ジップアリーナ岡山で開催の4試合を当日録画放送。